~医学と金融の交差点にて~
先日CancerXというイベントに出た。
周知のとおり、抗癌剤の開発はハイリスクハイリターン。
統計によると$200millionの投資に対して5%の成功確率、10年を超える開発期間を経て成功した際には$12billionのリターンが得られるそうだ。
年間期待リターン11.6%と破格なのだが高すぎるリスクから投資がなかなか集まらない。実際バイオベンチャーの資本コストは10%を超えることもザラ。
そこで、$30billionの巨大fundを立ち上げ、確率理論上独立したプロジェクトを多数同時に回した上で証券化やCSR向けの投資資金を駆使すれば投資家へのリスクを減らせるのでは?というテーマについて金融、医学、そしてコンピューターサイエンスの人たちを巻き込んだ議論が行われた。
"これだけ自分のキャリアにフィットしたイベントもなかなか無い"と思い参加。久々に感じる興奮からかもしかしたら自分はこのために生まれてきたのかもしれない、と大げさながら感じてしまった。
また他のイベント参加者はBostonやNew Yorkから集まったトップクラスの医師やバンカーたちとそうそうたるメンバー。MBA生は僕だけという恵まれた状況で色々教えてもらえる良い実りの多い機会に。
ちなみに主催者のAndrew Lo教授はMITの看板教授の1人でBoston、New Yorkから集まったトップクラスの医師やバンカーたちが口を揃えて"He is a great thinker."と呼ぶ人だ。このイベント以降Youtubeで同教授の講演を何度も見ているが彼の話は本当に面白い。(授業を取るのが楽しみ)
題材のMega Fund、まだ具体的な話は始まっていない。残念ながらご本人も実際にFundを立ち上げる意思はないようだ。しかしこれだけ強烈に偉大な方が音頭を取っている限り、Mega Fundというバベルの塔もいつか日の目を見る日がくるのかもしれないと思わずにはいられない。
最後にAndrew Lo教授が好んで自身の講演に使うストーリーを紹介したい。
(以下引用)
私はHervey Lodishのようになりたい。
MITから歩いて数分のところにGenzymeという会社がある。
キレイなガラス張りの建物に入っているBio ventureは23年前、現MIT教授のHervey Lodishらによって作られた。
Gaucher病という非常に稀な先天性代謝疾患の治療薬の開発目的で作られた会社は後にSanofiというフランスの製薬会社に$20.1 billion (現レートで2.2兆円) という記録的な額で買収される。
しかし私が彼のようになりたいのは彼が大金を儲けたからではない。2002年に彼に起こったことが本当の理由だ。
2002年、彼の娘がAndrewという名の男の子を出産する。そのAndrew君がなんとGaucher病を患って生まれてきたのだ。なんという確率だろう。
私は医者でも生物学者でもない。
しかし金融の、Mega Fundの力によって私たちは家族を救えるかもしれない。
だからHervey Lodishのようになりたいと思うのだ。
(引用終了)
Genzymeの施設の1つ。Bostonには大量の製薬企業・Bio Ventureが集積している