Debtbook Diplomacy

以前書いた中国の途上国向けローンについて調べてみたら思ったより事態はなかなか深刻なようで・・・

 

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上図は主な貸出先だが既に借金漬けになっている、あるいはなりかかっている国もあるようだ。

 

有名な例はスリランカ。巨大港建設向けに中国から貸し出された債務の支払いが滞ってしまった結果、港は中国へ99年リース。その港は軍事向けに転用されている。

 

またジブチは最近政府債務がGDP対比85%まで急増、その9割ほどが中国からの借り入れ。このジブチ(Djibouti)、僕も聞いたことの無い国だったのだが軍事的商業的に非常に重要な位置にあってアラビア半島とアフリカ大陸の間隙がちょうど狭まるBab el-Mandebという海峡に面している。

 

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他の国で地理上重要なのは下図赤丸で囲んだMalacca海峡、エネルギー資源の交易路として世界的な要所だ(日本の原油輸入の90%近くはここを通る)。現状米国Navyが軍事的に独占しているようだが周りのタイやマレーシア、特にタイはかなり中国からの借り入れが膨らんでいるとのこと。

 

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乱暴な言い方かもしれないが、汚職が進んでいる上にインフラ整備を急ぐ途上国向けの貸付など利払い開始時期を延期して現担当者/政権の間の負担を極力減らし、ワイロで丸め込んだ上にCredit Event(要は破綻だ)が起こった際の条件を不必要に複雑にしつつ自国に有利な条項を盛り込めばいっちょ上がりだろう。

 

Harvard Kennedy Schoolのレポートによると

 “The U.S. and its allies cannot offer public-private investment at anywhere
the scale of Chinese BRI funding”

米国や同盟国は貸出金のスケールでは勝てないとのことでアメリカが借り換え相手になれば解決できるのでは、との頼みの綱も外れ。果たしてどうなってしまうのか・・・

 

 

どの講義だか忘れたのだが、印象に残っているクラスメイトの発言を載せて今回は終わりにしたい。

 

『世界は平和になったように感じている人が多いけれども、決してそうとは思わない。今までに無い規模の戦争が起こったっておかしくないのだから。ちょうど原爆が、爆発する頻度が低いからと言って安全だと言えないように。』

 

 

 

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画像は闇金うしじまくん。中国政府が救いの神の可能性もなくはない。

 

 

(Reference: Debtbook Diplomacy. Belfer Center for Science and International Affairs. MAY 2018 https://www.belfercenter.org/sites/default/files/files/publication/Debtbook%20Diplomacy%20PDF.pdf)